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日本の製造業がオワコン化している理由

日本の伝統的な大企業、所謂ジャパニーズトラディショナルカンパニー(Japanese traditional company)に勤めて10年が過ぎました。

GAFAMらIT企業の価値が爆上がりしている中で、多くの製造業は後塵を拝しています。

もはや追いつこうという気さえ湧かず、どこか遠い国の世界の話のようにすら感じます。

製造業がこれまで勝つことができなかったことは事実として、なぜ伸び悩んできているのか、つまりオワコン化しているのか、内部の人間として経験してきたことを基に考察したいと思います。

こんな方におすすめ

  • 製造業に興味のある方
  • 製造業に就職、転職しようと考えている方

 

オワコン化している理由: 行き過ぎた合理化主義

日本の製造業のトップといえば間違いなくトヨタです。

常に日本の産業を牽引し、自動車産業の中でも最も高い利益率を誇っています。1)

トヨタ自動車工場の元副社長、大野耐一氏らを中心に確立されたトヨタ式の生産方式は、あらゆる製造業のお手本となっています。

過不足なく必要な量のみを生産する「ジャストインタイム (JIT)生産方式」(あるいはカンバン方式)が最も有名であり、無駄を徹底的に省いた限量経営を基本的な考えとしています。

製造業経営の大きな悩みの一つである効率的な生産と在庫マネジメントを、しっかりと体系化されていますので、誰しもが取り入れたいと考えるのは容易に想像できます。

 

 

そしてこの「合理化」という行為、おそらくトヨタから言わせれば「合理化"風"」な行為は、サラリーマン社長が運営する会社の経営陣や幹部連中にとって、とてもとっつき易いのです。

なぜとっつき易いかと言いますと、定量化しやすいので評価しやすいからです

寄与度が非常にわかり易いことに加えて、大きな失敗が出にくいことも理由に挙げられると思います。。

ありとあらゆることを削減していけば、数年くらいは成果が常に出ますし、先人達の成功事例の延長線みたいなことをしていれば、たとえ失敗しても大きなミスとしては考えられません。

更に、放漫経営だった会社ほど無駄な部分が多く、その分利益として成果が反映されます。

 

人事評価システムの変遷も少なからず影響していると考えています。

これまで、上司の好き嫌いや、頑張ったか否かのみで人事評価を行なってきましたが、グローバル化が進むに従いSMART基準のマネジメントが考えられるようになりました。

SMART基準では、よりクリアなゴールと、その評価にも定量性が求められます。

しっかりと効果額を主張できる、合理化活動は上司からしても部下からしても、目標設定に非常に組み込み易いのです。

SMART基準

  • Specific: 具体的
  • Measureable: 測定可能
  • Achievable:  達成可能
  • Relevant: (方針と)関連のある
  • Time-Bound: 期限のある

 

合理化のデメリット

シワ寄せは作業者へ

合理化活動は会社の無駄を省き、利益率をあげるには必要不可欠となります。

しかしながら、行き過ぎた合理化は、必ずどこかにシワ寄せが来ます。

例えば、作業者の動きを観察して、ストップウォッチで計測し、どこに不合理な作業があるのかを見つけ改善する、といったことは雇用の流動性が高い米国では中々理解してもらえないこともあります。

製造業であったとしても、自由を好む国ですから常に監視されているのは嫌だと感じる人も多いですし、またトヨタのように設備の導入やメンテナンスも考慮された上での合理化であればまだ良いのですが、表面上だけなぞって、もっと早く行動しろということを要求し続けると悲惨なことになります。

コロナ禍において、アメリカでは特に現場の労働者がたくさん解雇、レイオフされました。

工場がそもそも動いていなかったからです。

ある程度ワクチンが普及し工場の稼働率が上がってきますと、今度は逆に労働者不足となり、必死に採用活動を行いました。

しかしながら、厳しい管理体制の職場では中々定着せず、雇っては辞めを繰り返し続けている現状です。

熟練の労働者を再雇用したり、あるいはある程度高い時給を提示しないと人が集まらないため、逆に人件費が上がるようになってしまいました

合理化にはある程度限りがある

常に新しい製品を作り続けているようであれば良いのですが、古い製品を何十年も同じ機械で続けているような小さな工場ですと、合理化できることがそもそもかなり限られています。

合理化活動もパレートの法則のように、最初の20%で80%くらいの効果が現れます。

何も手をつけられていない状態ですと、改善のタネはそこら中に転がっており、効果の高いところから実践することができます。

どんどん合理化を行なっていくと、短期的に大きな利益改善を目に見える形でできますが、将来への投資をしなければどこかで頭打ちになってしまいます。

なぜなら、新しい製品開発や新しい工法を取り入れない、すなわちトップラインを伸ばす努力をしないので、そもそも改善のタネが生まれないからです。

それでも尚、過去の成功体験に縛られて、もう無駄だとわかっていても続けてしまい、成果が出ないにも関わらずリソースを割くようになり、どんどん負の連鎖に陥ってしまいます。

それが、オワコン化した製造業の成れの果てです。

将来の種を蒔くのが遅れる

コスト削減を進めていくと、開発費も中々上げず、最悪の場合は開発費を削る場合もあります。

海のものとも山の物ともつかない、基礎検討分野は早期で結果を出すことが求められるようになりますし、ビジネスに直結する絵がかけなければテーマ中止を言い渡されます。

事業部の方でも、材料の合理化やコスト削減活動に重きを置いたり、成果の出易いところにどうしても注力してしまいます。

先人達が撒いた種を刈り取るのに必死で、まだ花が咲く前に根こそぎ刈り取っていってしまうようなイメージです。

あるいは、贅肉を取り除こうとしているのに、腕を丸ごと切り落としているくらいのイメージです。

 

結局、10年も20年も似たような技術を追い求めているうちに、技術は陳腐化してしまいます。

そして、資金力もあり安い労働力を確保できる中華系の企業にコスト勝負で挑まれ、いとも簡単に駆逐されてしまいます。

このような企業を目の当たりした若い人たちは、日本でもアメリカでもより良い職場を求めて転職いきます。

残るのは、数十年前の知識を持つベテラン社員しか残らず、技術のみならず若い人たちにも見放されることになります。

 

製造業の将来

個人的には、まだ意外と日本の製造業は食べていけるのではないかと考えています。

なぜなら日本の労働者の質は非常に高いからです。

自分である程度物事を考えて、改善を実施していくなんて、他の国じゃ考えられません。

現場の大変な作業について文句も言わず、サボりもせず、技術を深めて会社に残ってくれるという、かなり理想的な労働者が揃っています。

加えて、日本はデフレのおかげで、労働者の賃金は極めて安いときています。

あとは、日本よりも安い労働力を探し出し、コモディティ化した製品を移管し続けてるといった感じでしょうか。

ただし、もう少しどこに付加価値があるのか2)を理解しないと、いつまでたっても効果の出ない合理化に時間とお金を費やしてしまうような気がします。

結論、このまま何も変わらなければお先真っ暗ですし、今から変わり始めたとしても10年くらいは効果が出るまで時間がかかるんじゃないかと考えています。

 

知らんけど。

 

引用

1)自動車業界 利益率ランキング(2020 - 2021年)

2) スマイルカーブを打破! 中流部門でも稼ぐ仕組みを作る

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